アンソロジー2023

アンソロジー2023について

創立三十年記念事業の際に出版された「行動分析学研究アンソロジー2010」で武藤崇先生がアンソロジー編纂の目的について、次のように書いています。「…つまり、行動分析学(あるいは行動分析学的な研究)を機能的に理解してもらえるようになっているのです。(武藤, 2010)」
今回のアンソロジー2023版も同じ方針で選定いたしました。2010年から2023年(24巻1号~37巻1号)までに公刊された論文から12編を選定しています。行動分析の初学者の方はぜひ、すべての論文に目を通していただければと思います。

コンセプト

創立三十年記念事業のアンソロジーは、初学者の「行動分析学的な研究とは、どのようなものなのか」という問いに答えるもの、つまり、行動分析学の全体像理解のための素材提供という点に焦点を当てて編纂されています(「刊行にあたって」および編集後記から)。創立40年記念事業のアンソロジーは、我が国の行動分析学の黎明期からの30年を受けた「その後の10年間」の成果をまとめるものとしました。コンセプトとしては、創立三十年記念事業の初学者へのメッセージという根幹を継承しつつ、行動分析学の懐の広さ、有用性、面白さといった点を伝えることを目指しています。

論文の選定

創立三十年記念は23年分計40冊に掲載された283編の中から、21編が選定されました。創立40年記念事業の対象はその後の13年分計28冊に掲載された174編の中から選定しました。創立三十年記念事業と比較すると母数が約6割ほどとなっているので、選定する論文数も5~6割になるようにしました。選定基準は、コンセプトにある通り、独創性、萌芽性、学術的・応用的価値などをふまえた上で、「初学者に読んでほしい内容であること」を重視して選定しました。

アンソロジー2023選定論文

  • 久保尚也・小野浩一(2010).ハトによる「線画顔刺激」の年齢弁別 行動分析学研究,24(1),41–53.
    https://doi.org/10.24456/jjba.24.1_41
  • 奥山高光・井澤信三(2010).自閉症児における自己および他者視点の左右弁別の形成 : 高次条件性弁別による分析と視点般化の検討 行動分析学研究,24(2),2–16.
    https://doi.org/10.24456/jjba.24.2_2
  • 下山真衣・園山繁樹(2010).カリキュラム修正と前兆行動を利用した代替行動分化強化による激しい自傷行動の軽減 行動分析学研究,25(1),30–41.
    https://doi.org/10.24456/jjba.25.1_30
  • 仁藤二郎・奥田健次(2013).嘔吐不安を訴えるひきこもり男性の食事行動への介入:エクスポージャーにおける行動アセスメントと介入の評価 行動分析学研究,27(2),80–91.
    https://doi.org/10.24456/jjba.27.2_80
  • 松本啓子・村井佳比子・眞邉一近(2014).美容師の指名客数増加のための社会的スキルトレーニングの効果 行動分析学研究,29(1),2–18.
    https://doi.org/10.24456/jjba.29.1_2
  • 内田雅人(2015).特定保健指導とその後の健康維持行動の継続における自己管理支援プログラムの探索的検討 行動分析学研究,30(1),24–32.
    https://doi.org/10.24456/jjba.30.1_24
  • 大屋藍子・武藤崇(2016).パーセンタイルスケジュールが大学生の野菜摂取行動の拡大に及ぼす効果 行動分析学研究,31(1),30–39.
    https://doi.org/10.24456/jjba.31.1_30
  • 眞邉一近(2017).実験的行動分析学における新たな種への挑戦——いかにして動物実験を実施するか?—— 行動分析学研究,31(2),163–180.
    https://doi.org/10.24456/jjba.31.2_163
  • 山岸直基(2017).人間における時間間隔をおいた行動の形成——並行スケジュールによる行動の変異と淘汰の制御—— 行動分析学研究,32(1),2–20.
    https://doi.org/10.24456/jjba.32.1_2
  • 富田悠香・菅佐原洋(2018).自閉症スペクトラム障害児への4コマ漫画を使用した報告言語行動訓練——感情語の表出を対象に—— 行動分析学研究,32(2),110–126.
    https://doi.org/10.24456/jjba.32.2_110
  • 髙津梓・奥田健次(2019).給食場面中に不適切行動を示したダウン症児童への指導——摂食行動に対するエラーレス指導—— 行動分析学研究,34(1),64–70.
    https://doi.org/10.24456/jjba.34.1_64
  • 丹野貴行(2021).実験的行動分析と徹底的行動主義の関係性——概念分析—— 行動分析学研究,35(2),111–127. https://doi.org/10.24456/jjba.35.2_111