日本行動分析学会ニュースレター

J-ABAニューズ 1996年 秋号  No. 5


私と行動分析学の出会い

リレーエッセイ

山口 薫(東京学芸大学)

人には誰でも、この人なしには今日の自分はあり得ないと思われる人が何人 かあるのではないだろうか。私にも何人かあるが、その筆頭にあげるべき人は 何といってもシドニー・ビジュー先生である。

私は1967年9月から1年間、フルブライト研究員としてイリノイ大学で 研究生活を送ったが、イリノイ大学を選んだのは、当時世界の特殊教育の最高 指導者の一人であったサムエル・カーク博士の下で研究をしたかったからであ る。ところが直前になって、カーク先生はアリゾナ大学へ移ることになり、途 方に暮れていた私に、カーク博士から、イリノイ大学にはこういう有能な心理 学者がいるからといって紹介されたのが、その後の私の運命を決定ずけること になったビジュー先生との出会いであった。

 カーク博士の指導を直接受けられなくなったことは残念であったが、ビジュー 先生と出会ったことでオペラント原理を学ぶことができ、帰国後日本に精神遅 滞や自閉症に対してオペラント原理を適用する応用行動分析を発展させる契機 となった。

恥を忍んで告白すれば、学生時代あまり心理学を真面目に勉強しなかったため、 スキナー箱とか道具条件づけといったことが僅かに頭に残っているだけだった 私は、オペラントという言葉を聞いてもほとんどよく分からず、日本の友人東 洋君へ手紙を書いて教えてもらうような始末であったが、ビジュー先生の論文 や、紹介された他の研究者の論文(主としてワシントン大学)の論文を読んだ りして次第に理解と関心を深めていった。

 特に感銘を受けたのは、イリノイ州の首都スプリングフィールドで開催され たアメリカ精神遅滞学会の地区大会で、ビジュー先生の司会する分科会で報告 した若い心理学者ピーターソンの、精神遅滞児の自傷行動を扱った研究と、ビ ジュー先生の大学院のクラスで、マドセン自身から直接報告をきいた、彼等の 行った小学校低学年児童の離席行動を扱った研究であった。

前者は、壁に頭を打ちつけていつも血だらけになっていた激しい自傷行動に タイムアウトを適用することによって僅か2週間で全く消失したというもので、 8ミリのカラー映画をみせながらの報告であったので強烈な印象が残っている。

もう一つのマドセンらの研究は、授業中の離席行動に対し教師が注意すれば するほど離席者が増え、離席に対しては消去しながら、着席行動に賞賛を与え た時が離席行動がもっとも少なくなったという、これもまたみごとな研究であっ た。

ビジュー先生には、その後しばらく後になってからであるが、ポーテージプ ログラムの日本版作成をすすめられ、そのことがきっかけで、ここ10数年来私 の仕事の中心になっているポーテージプログラムによる発達遅滞乳幼児の早期 教育の研究が開始されることになった。

このことについても深く感謝しているが、帰国後もイリノイ大学や、その後 移ったアリゾノ大学、さらに現在のネバダ大学リノ校のビジュー夫妻を訪ねた り、日本にも度々お招きしたりして親しく教えていただいている。

ビジュー先生に会っていつも感心するのは、決して人の悪口を言わないとい うことである。行動分析の原理を日常の生活にもきちんと応用しておられるわ けで、書斎にも、毎日の研究時間の累積記録がグラフにして貼ってあった。

私がビジュー先生の下で学んだことが縁で、私の後鳥田征子、東正、伊沢秀 而の諸君がイリノイ大学でビジュー博士の薫陶を受けた。

東君とは、その後ビジュー博士とカンザス大学のドナルド・ベアー博士の共 著を共訳し、「子どもの発達におけるオペラント行動」と題して出版したりし た。私や東君らによって精神遅滞や自閉症への応用行動分析が我が国に広まり、 やがて実験行動分析の研究と結びついて、日本行動分析学会の結成に至るわけ であるが、そのような流れを顧みると、ビジュー先生との出会いは、単に私個 人にとって運命的な出会いであったのみならず、我が国の応用行動分析学の発 展にとっても大きな意味のある出会いであったというべきであろう。


91年にメ キシコのロサコネス(スキナーのウォールデントゥーを地で行くようなコミュ ニティ)を訪問したときに、山口先生のお名前とお写真を見つけました。先駆 者ですよね。行動分析学会の年次大会では最近おみかけしないような気もしま す。ぜひまたいらしていただいて、応用行動分析学の若手に貴重なお話しをし て下さい(編)。

報告:ノーステキサス大学短期留学体験記

青塚 徹(駒沢大学人文科学研究科)


今年の夏休み、テキサス州デントン市にある州立ノーステキサス大学での、 行動分析学の基礎を学ぶ3週間の夏期講義に参加しました。行動分析学を直接 英語で学んでみたかったこと、アメリカの大学ではどんなふうに行動分析学が 学ばれ、また研究されているのかを実際に見てみたかったことなどが参加しよ うと思った理由でした。単純に、アメリカという国を肌で体験してみたいとい う思いもありました。出かける前は、英語が苦手なこともあって「そもそも日 本から大学までちゃんとたどり着けるだろうか?」、などと心配症の私は考え ていましたが、参加していろいろな体験ができ本当に良かったと思います。講 義の様子や、ノーステキサス大学の行動分析学科のかたがたとの交流など、思 いつくままに以下に書いてみました。

講義について

受講したのは、Dr. Sigrid GlennのBasic Behavioral Principlesという講 義で、L. Keith Millerの "Principles of Everyday Behavior Analysis"をテ キストとして、応用行動分析学の基礎を徹底して学ぶという内容でした。ただ しDr. Glennが直接講義をされるのではなく、ティーチングインストラクター が指導にあたり、StacieとBryonの2人の大学院生がパワフルな講義をしてく れました。クラスの人数は、日本から参加した学生が5名、今年からこの大学 の大学院で勉強する日本人学生が1名、アメリカ人の学生が7名の13名でし た。アメリカ人の学生は、夏期の講義ということもあってか年齢も一様ではな かったのですが、それが違和感なく感じられたのが印象的でした。講義は週5 日、3週間でテキストの13章分をこなしました。日々の講義は基本的に次の ようなスケジュールでした。(午前)テスト 9:30から11:30 (た だし、この間にいつ来てもよく、テストが終われば自由に出て行ってよかった。 早い人は15分位で終わっていた) 前日の講義で習った行動分析学の用語に 関して、テストを受けた。コンピュータルームで、画面に出される10問のテ スト(テキスト1章分)をこなした。合格ラインは90%で(すなわち9点以 上)、1回で合格ラインに達しなければ3回目までチャレンジできた(ただし 合格しなくとも、得たポイントは単位のための得点になった)。画面の問題に 対して、前日の講義で習った用語を解答として打ち込んだ。スペルミスも間違 いになるので気を使ったが、ミスした場合後でインストラターに言えば正解に してもらえた。(午後)講義 12:15から1:30 テキスト1章分につ いて、行動分析学で使われる基本的な用語の定義を徹底して学んだ。講義中も インストラクターからひっきりなしに質問があり、用語に関してそれを日常生 活に当てはめた例をその場で考え、発表させられる場合もあった(例えば、 differential reinforcementを実際の生活場面に当てはめた例など)。英語が 聞き取れなくて苦労したが、インストラクターの2人が根気よく付き合ってく れた。

日々のテストのほかに、中間テストと最終テストがあり、やはりコンピュータの画面の問題に対して答えるものでした。宿題は任意でしたが、やればポイントがもらえるのでみんな熱心にやってきていました。その内容は、翌日の講義で使用される用語について、やはり日常生活に当てはめた場合のストーリーを創るというもので、採点の後コメントといっしょに返してもらえました。講義中にもペーパーによる小テストがあり、特別にポイントがもらえるなど講義全体が完全なポイント制になっていました。 というような毎日で、予習復習をしていかなければテストには答えられず、 インストラクターの質問には「えーと・・それは・・」ということになってし まうので、講義後はテキストにかじりついて予習・復習・宿題に追われていま した。

講義はほんとにパワフルで、特にインストラクターのStacieは元気一杯!歯 切れのよい英語で行動分析学の用語を分かりやすく説明してくれました。 "What procedure can be used in this situation?"などと質問され、私が自 信なげに"Discrimination training..."などと答えると、当たっていたら "Good,very good, Toru!"と元気のいいことばを投げ返してくれました。私は、 「おお、Positive reinforcement!」と思って勝手に喜んでいましたが、そん な正の強化に助けられて毎日の講義を楽しく受けることができました。最近は 少しおろそかになっていた行動分析学の基本を生の英語で学んでみて、自分自 身の勝手な解釈や思い込みを正すことができたように思います。また、今まで 日本語で学んできたことをアメリカ人といっしょに英語で学び直してみると、 なぜ行動分析学がアメリカで根強く支持され続けるているのか少し理解できた 気がしました。先ほどの講義の話ではないのですが、Positive reinforcement をするということが、ときにNegativeな問題をNegativeな方法で解決しようと しがちな社会にあって、非常に大切に感じられるからかもしれません。

行動分析学科のかたがたとの交流

ノーステキサス大学には独立した行動分析学科(Department of Behavior Analysis)があり、Dr. Sigrid Glennが学科のchairをされています。学科に は5人の教授がおられ、それぞれ理論、実験、応用の各分野の研究をしておら れます。独立した行動分析学科として、まとまって活動できるというのはうら やましい限りだと感じました。Dr. Glennはじめ学科の先生がたや学生のみな さんが、講義以外にもいろいろと学ぶ機会を与えてくれました。先生がたの研 究分野についてお話を聞かせていただいたり、大学院生の研究を紹介をしても らったり、大学院の授業に参加させていただいたりと、盛りだくさんの内容で した。また、Dr. Glennが一人一人に面談をしてくださったり、学科の Dr.Smithが州の障害者のための施設に研究室を持っておられ、そこで実際の研 究の様子を見せていただいたりしました。短い間に内容の濃い体験をさせてい ただいたと思っています。

また週末には、学科の人たちとロデオのショーを見に行ったり、南部料理の レストランに行ったり、また地元のバンドのライブに行ったりと、楽しい時間 を過ごすことができました。中でも、メジャーリーグの試合を観にダラスの球 場まで行ったときは、初めて観るメジャーのプレイに感激しました。地元のテ キサスレンジャースとニューヨークヤンキースの試合でしたが、球場が大きい のには驚きました。ここで場外ホームランだったら日本の球場じゃなんになる んだ!(そりゃやっぱり場外ホームランだ!)、というくらいでしたが、暑い 中冷たいビールを飲みながら観戦する気分は最高でした。対ドジャース戦だっ たらもっと良かったな、などと贅沢なことも思ってしまいました。一緒に行っ たノーステキサス大学の学生たちも楽しんでいました。「わたし野球のプレイ よりも、スタジアムで売ってるジャンクフード(ホットドックとか)食べてさ わぐのが楽しみなのよ」と、そのうちの1人が言っていたのですが、楽しみ方 は人それぞれ自由だよな、とテキサスの空の下では素直に思えてしまうのでし た。

というような短いけれど中身の一杯詰まった3週間でした。今思い返して、 夏のテキサスは日差しが強くて、とにかくすべてがBig Size!そこで出会った 人たちも、そのテキサスみたいに陽気でおおらかな人たちでした。"See you in Chicago for ABA!"ということばに送られてテキサスを後にしました。

最後に、私たちを温かく迎えてくださったDr. Glennはじめノーステキサス 大学の行動分析学科のみなさん、この留学を主催してくださった慶応大学の杉 山尚子先生、私たちの世話をいろいろと焼いてくださったノーステキサス大学 に留学中の是村由佳さん(Yuka-1)に、この場を借りてお礼申し上げます。ま た、日本から一緒に参加した4人の仲間たち(Nao, Yumiko, Yuka-2, Chihoko) には、楽しい時間を過ごさせていただいたことを感謝いたします。


論文紹介:
ティーチング・アシスタント募集に対する心理学者の返答

佐藤達哉(福島大学行政社会学部)


かつて畏友N氏に面白い論文を教えてもらったので部分的にですが紹介します

 行動学徒として、われわれは皆、自分の現在の行動の種が遥か昔に蒔かれた ということに気づいている。確かに、現在自発されている反応を元に過去の行 動を推測することは難しいが、それをやってみることは(すこし非科学的であ るとしても)面白いことだろう。下記の行動の仮説的なサンプルがそれである。 それらは、何人かの優れた心理学者が学部時代、ティーチング・アシスタント 募集の広告にどのように答えるかについてわれわれが考えたものである。返事 は以下の通り:



・スケジュール表を調べてみましょう  −−C.B.Ferster


・仕事を選ぶ自由はありますが、これはあいにく、尊厳のない


 仕事のようなので、ご遠慮します   −−B.F.Skinner


・こんな機会は垂涎の的です      −−I.P.Pavlov


・そのような求めについて想像してみましょう−−J.Wolpe


・ふむふむ              −−J.Greenspoon


・わかりました。でも一度だけですよ  −−W.K.Estes


・やりたいんですが、2つのことをいっぺんにはできませんので


                   −−A.C.Catania


・採用される可能性はどのくらいですか?−−S.Siegel 


・だれか先にやっているのを見学させてもらえますか?          


                   −−A.Bandura 





Jans, J. E., & Holliday, S. G. (1976). Psychologists' hypothetical


    responses to a hypothetical advertisement. Journal of the


    Experimental Analysis of Behavior, 25, 242. より


はたしてこの論文はなんなんでしょうかね? 以下、私も考えてみました。



・まず実験室を作りましょう!                ――W.Wundt


・状況によります                      ――W.Mischel


・12人の学生を私に任せてください             ――J.B.Watson


・役割は分かりました。でも、内容は私の自発性に任せてください――J.L.Moreno


・ティーチング・アシスタントの定義をしっかり決めてください ――E.G.Boring


・実際にデータを取らなくてもいいですか?          ――C.L.Burt


・ ^|^                          ――R.L.Fantz



しっかり笑えましたか?笑える人は毒されてます。笑えない人は勉強不足です!  http://133.52.71.16/ads/sato/asobo/ から「ティーチング・アシスタント 募集に対する心理学者の返答」をクリックして勉強しましょう。私は3割くら いしか笑えなかった。勉強し直します。誰か、勇気とユーモアのある人、日本 人版を作りませんか?(編)。

大阪市立大学文学部心理学動物実験室

研究室&研究会紹介シリーズ 第3弾

伊藤正人(大阪市立大学)ito@lit.osaka-cu.ac.jp


 大阪市立大学は、戦前の大阪商科大学を母体に、戦後に各種の学校を統合し て8学部からなる最大規模の公立大学として発足したものです。文学部は、法 文学部として発足し、心理学教室もこの時に設置されましたが、発足時から実 験心理学を中心とした教育・研究体制が組まれ、今日に至っています。動物実 験室関係では、発足時から村田孝次氏がラットを使って学習の研究を行い、続 いて、平野俊二氏がラットやネコを使って生理学的研究を行っていました。平 野氏が京大に転じた後は、現教員の梅本守氏(生理心理学)が、その半年後 (1976年4月)には伊藤(学習心理学)が着任し、現在の教員体制ができあが りました。

 伊藤の着任時の動物実験施設は、1972年に新築された独立棟(約74平方メー トル)で、これは、文学部棟と渡り廊下でむすばれていました。長らくここで カラスやラットを使った実験を行っていましたが、その当時は、まだ大学構内 にもいくらかの自然が残っていたようで、動物実験室の裏で、ウズラの親子づ れを見かけたり、飼育室内にアオダイショウが進入する事件もたびたびありま した。しかし、学生数の増加とともに、動物実験室の狭隘化や設備の老朽化が 目立つようになり、さらに動物愛護や福祉の議論も高まってきたことから、動 物実験施設の改善が急務となってきました。幸い、文学部の実験系教室の整備 計画の一環として心理学の一般実験室とともに動物実験室の整備も行われるこ とになり、1994年11月に新しい動物実験室が竣工しました。新しい動物実験室 の概要は、拙稿「新しい心理学動物実験室」(大阪市大文学部紀要人文研究第 47巻1995年)及び「動物実験室鳥舎」(同第48巻1996年)に詳しく述べたので、 ここでは簡単に紹介することにしましょう。

 新しい動物実験施設(約130平方メートル、他に鳥舎約17平方メートル)は、 ラットとハトを飼育できるように、米国国立衛生研究所(NIH)の実験動物の 管理と使用に関するガイドラインに準拠し、動物愛護・福祉とともに研究者に とっても安全で快適な実験環境の実現を目指して計画されました。特に、本施 設は、これまで前例のない、研究室や教室を含む複合的建物内に設置されたの で、臭気対策には細心の注意を払っています。これは、動物実験室全体の綿密 な換気計画と前号の藤健一先生の記事にあった一方向気流方式による飼育シス テムを採用することで、ほとんど臭気のしない飼育室や実験室が実現できまし た。また、この方式では、空気が室内側から飼育ラック側へと流れるので、い わゆる人畜共通感染症の発生も防ぐことができます。このように、新しい動物 実験室は、かっての臭い、汚い、暗いという3K環境が信じられないくらいに 安全で快適な環境になっています。

 現在、動物実験室では、生理と学習の二つの研究領域に分かれていますが、 学習関係には、研究生(博士課程修了者)1名、大学院生3名、学部生1名が 在籍しています。また、この11月から、Bragason氏(アイスランド研究財団) が客員研究員として6カ月間滞在する予定です。各自の研究テーマは、オペラ ント条件づけ研究を基礎に、選択行動、採餌行動、社会的相互作用、意思決定 など生物学や経済学との学際的研究領域の問題が中心になっています。このた め、理学部や経済学部のスタッフとの交流も積極的に行っています。これらの 研究の被験体は、主に、ラットとハトですが、最近では、幼児や大学生を被験 者としたセルフコントロールと衝動性に関する研究や確率判断・意思決定の研 究も精力的に行っています(昨年と今年の行動分析学会大会や心理学会大会の 発表論文集を参照)。勿論、これらの研究は、動物実験室ではなく、心理学の 一般実験室や保育園で行っています。

 最後に大学院について少し述べておきましょう。今年度から前期課程につい ては、9月と2月の2回の入試実施に踏み切りました(後期課程については、2 月のみ)。また、昨年度から、前期課程の第二外国語を英語で受験できるよう にしました。さらに、後期課程では、3年次終了時に博士号を取得できるよう に指導することになりました。これらは、すべて大学院の活性化策の一つです が、裏返せば、これまで大学院受験生が少なかったことを示しているわけです。 受験生が少ないことは、ある意味では、入りやすい穴場といえるのではないで しょうか。行動分析に興味を持つ、志ある皆さんに受験をお奨めします。


行動分析学を学んで学位を取りたい人に、また選択肢が増えたようですね。 「3年次終了時に博士号を取得できるように指導する」というのはなかなかで きないコミットメントです(編)。

 

お知らせ 発達障害研究所公開シンポジウム'97

愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所では以下の要領で「発達障害研究所 公開シンポジウム'97」を開きます。今回は当研究所の治療学部・能力開発部・ 社会福祉学部が担当します。関心のある方は是非ご参加下さい。入場は無料で す。



●テーマ:「新しいヒューマン・サービスの展開をめざして」


  −発達障害のサイエンス− 


●日時:平成9年2月28日(金)午前10:00〜午後4時45分


●場所:名古屋国際会議場(白鳥) 


  名城線「日比野」または「西高蔵」下車


  6月に「行動分析学会」を開いた場所です。部屋は入り口に掲示してあります。


■講 演 10:00〜11:30  篠田達明先生(こばと学園園長) 


  テーマ:「歴史に見る障害者像」


■分科会  1:00 〜4:45


第一分科会(1:00〜2:45)「障害者の健康と生活環境を考える」


  司  会:三田勝己 


    三田勝己:寝たきりの弊害 −廃用症候群−


  関根千佳:インターネットやパソコン通信で障害者の生活はどう変わるか?


  青木 久:重度肢体不自由児のパソコン操作環境


第二分科会(1:00〜2:45)「知的障害を持つ人の『自己決定』


    −理念から援助技術へ−」


  司  会:小野 宏 


    望月 昭:最重度の障害を持つ人の選択決定


    渡部匡隆:本人たちによる職場環境の改善の可能性


    落合俊郎:FCあるいは表出援助をめぐる諸問題


第三分科会(3:00〜4:45)「発達障害児の言語とコミュニケーション」


  司  会:西村辨作 


    飯高京子:発達障害児の動詞学習について


    綿巻 徹:障害児のためのコンピューター支援学習


    西村辨作:自閉症児のコミュニケーションを考える


第四分科会(3:00〜4:45)「障害者の地域生活援助と人権」


  司  会:渡辺勧持 


    三田優子:本人たちはどう考えているか−本人活動を通して−


    大島正彦:重度の障害をもつ人々の昼間活動と家族援助


  大井英子:地域生活における人権擁護の課題





お問い合わせは、能力開発部 望月まで 


 電話:0568-88-0811(内線)3505/FAX:0568-88-0829


 E-mail: HGD01512@niftyserve.or.jp



お誘い 目撃証言の研究をしませんか!

佐藤達哉(福島大学行政社会学部)a096@mail.ipc.fukushima-u.ac.jp


 現在、法と心理学を結ぶ研究として目撃証言の問題が注目を集めています。 簡単に言うと、ある人がAという人のことを犯人だと言った場合に、その内容 が間違っていて、いわゆるえん罪が起きていることが問題になっているのです。 目撃証言は多くの場合写真帳から犯人を選んでもらうという方法を用いますか ら、マッチング課題の1つだと考えることができます。したがってこの問題は おそらく行動分析的アプローチから検討できると思います。また、目撃証言で 問題なのは、自分がある証言「Aが犯人である」ということを一度言う(言わ される)と、それが新たな経験となって、実際に見た記憶(見たのはBという 人であったとしても)と置き換わってしまい、本人が強い確信をもってしまう ことです。あえて記憶が置き換わると書きましたが、言うまでもなくこのよう な認知的な言い回しは何も説明していません。このような人間行動がどのよう なプロセスで起きているのかを理論的に検討するのは行動分析的アプローチが 最適だと考えられないでしょうか。謝った証言を自発させられる(誘導される) プロセスが明らかになれば、えん罪が少なくなることが期待できます。えん罪 というのは真犯人を逃していることの裏返しですから、ある意味では社会正義 を追求することにもつながるでしょう。日本弁護士連合会も目撃証言の問題に 継続的に取り組むことに決め、研究会を定期的に開いており、心理学者の力を 必要としています。そんなわけですから興味をもった人にはぜひ取り組んでほ しいと思っています。興味をもたれた方は現代のエスプリ『目撃者の証言』 (至文堂)を読んでいただき、あわせてご連絡いただければと思います。


事務局だより −冬−

事務担当 大石幸二(筑波大学心身障害系)


 日毎に寒さが増し、筑波山から吹き下ろす風は痛いくらいで、まもなく冬本 番といったところです。会員の皆様におかれましては、お元気でご活躍のこと と存じます。

 さて先日、会則第6条および細則にもとづき「理事・監事選挙」が無事終わ りました。有効投票率は19%と低調でしたが、めでたく新理事10名が選出され ました。また、さきの理事会(公開講座当日開催)において推薦理事10名も推 挙され、現在、理事長選挙が行われています。いずれにしても、この20名の新 理事の方は、その任期が1997年4月から2000年3月までの3年間ですので、20世 紀を締めくくり21世紀の幕開けを告げる重要な役割を担うことになります。

 ところで、年次大会が終わり、理事・監事選挙も済み、公開講座を終えた今、 1996年度の本学会主催のビッグイベントは、このニューズレターの発行と機関 誌の刊行を残すばかりです。ご存知のように、これらの事業は会員一人ひとり の年会費により支えられています(なにか大蔵省の宣伝みたいですが)。とこ ろが現在(11月20日現在)、本学会は116名の会費未納者と滞納者を抱え、決 して豊かな台所事情にあるとは言えません。このために常任理事会や理事会で は絶えずこの問題がとり沙汰され、理事の方々は有効な介入方法の選定に苦慮 しておられます。実際、多量の雑誌購入をして頂いたり、人海戦術で会費未納・ 滞納会員との直接交渉にあたってくださっています。これにより100万円を上 回る収入の可能性があり、10巻2号の刊行が滞りなく行えると見込まれるから です。

特集号一覧



5巻2号 スキナー追悼号


7巻2号 応用行動分析の最前線


8巻1号 ノーマライゼーションと行動分析


9巻2号 実践研究


 そこで、事務担当では、財政の立て直しをはかって、先月から機関誌のバッ クナンバーの特別セールを行って参りました。これまで、9名の方に162冊のバッ クナンバーを購入していただきました。ありがとうございます。なお今回、1 冊700円(通常1000円)の特別価格で提供するこのキャンペーンを、12月末日 まで延長して行うことにいたしました。特に「特集号」は、教科書の補足とし て、また行動分析学に興味を持ちはじめたお友達へのクリスマスプレゼントと して最適と思われます。この機会にぜひお買い求めください。

 卒論、修論、博論、研究論文とまとめの時節ですね。皆様、お身体ご自愛く ださい。


 

編集後記

  • 本号からニューズの号数を巻/号による併記ではなく号数の連番にしまし た。製本するわけじゃないんだし、これでいいんですよね。

  • 私事ですが、12/22から2週間ほど、タイへクライミングへでかけます。 海岸沿いにそびえ立つ岩を登り、海へ潜り、トロピカルな気分にひたってこよ うと思います。でも、根が貧乏性なので、「パワーブックを持っていって原稿 でも書こうかなぁ」と友人にもらしてはひんしゅくをかっています。皆様も、 楽しく有意義な年末をお過ごし下さい。それから、来年もjABAニューズを よろしくお願いいたします。


    J-ABAニューズ編集局
    〒772 鳴門市高島 鳴門教育大学 人間形成基礎講座 島宗 理
    TEL 0886-87-1311(内340) FAX  0886-87-1053
    E-mail simamune@naruto-u.ac.jp

    皆様からの記事を募集しています。研究室や施設の紹介、用語についての意見、 学会に対する提案や批判、求人求職情報、イベントや企画の案内、ギャクやジョー ク、その他まじめな討論など、行動分析学研究にはもったいなくて載せられな い記事を期待します。原稿はテキストファイルの形式で、電子メールかフロッ ピー(DOS/Mac)により編集局までお送り下さい。2000字程度を目安にし、本 紙1頁におさまるように考えていただければ結構です。 尚、次号の〆切は97 年2月7日です。