日本行動分析学会ニューズレター

J-ABAニューズ
2002年 秋号 No. 29(12月11日発行) 


発行 日本行動分析学会 理事長 小野浩一
〒154-8525 東京都世田谷区駒沢1-23-1 駒澤大学文学部心理学研究室内
電子メール: j-aba@komazawa-u.ac.jp
電話:03-3418-9303(心理学研究室事務室)
FAX:03-3418-9126(日本行動分析学会事務局と明記して下さい) 
ホームページアドレス: http://behavior.nime.ac.jp/~behavior/

役員選挙速報

選挙管理委員会

理事長選挙
11月30日(土)に開票された20名の新理事による理事長選挙の結果、中野良顯氏 (上智大学)が新理事長に選出されました。新理事長の任期は、2003年4月1日 より2006年3月31日までの3年間です。

新理事選出
 理事長選挙に先立って実施された理事選挙(10月5日開票、投票率22.4%) において10名の新理事が選出され、さらに、その後開催された理事会(10月19 日開催)において10名の理事会選出理事が決定いたしました。新理事は以下の 方々で、任期は理事長と同じです。

選挙による理事(10名) 得票順
真邉一近、浅野俊夫、河嶋 孝、中野良顯、島宗 理、藤田継道、杉山尚子、 小野浩一、望月 昭、小林重雄

理事会選出理事(10名)50音順
鎌倉やよい、坂上貴之、佐藤方哉、清水直治、園山繁樹、中島定彦、中山照章、 藤 健一、藤原義博、山本淳一


日本行動分析学会『実践賞』候補者推薦のお願い

島宗 理・浅野俊夫(企画委員会)

 去る8月24日の総会で、学会賞の設立が原案通り承認されました。『論文賞』 『実践賞』の選考がこれから始まります。

 このうち『実践賞』は社会的な問題の解決に行動分析的なアプローチを使っ て実績をあげている個人や組織を表彰する賞です。会員の皆さまからの推薦に よって候補が決まり、選考を行います。候補者は会員・非会員を問いません。 また、行動分析学を自覚せずに活用していても、それがすばらしい実践であれ ば候補になります。詳しい選考手続きに関しては、J-ABAニューズ2002年春号 (No. 27)をご参照下さい(学会HPからも閲覧できます)。

 推薦の〆切は2003年2月14日(消印有効)、宛先は学会事務局まで封書でお 願いします。

 会員ならどなたにでも候補者をノミネートする権利がございます。ぜひこの 実践を!という個人や組織を、末尾の用紙で推薦して下さい(推薦書フォーム のWordファイルは学会HPよりダウンロードできます)。


第20回大会報告

第20回大会委員長 河嶋 孝

 第20回大会は、2002年8月22日から24日まで、日本大学生物資源科学部湘南 キャンパスで開催されました。過去の大会の参加者数や、湘南キャンパスとい う都心から離れた場所で開催することから、参加者数は200名ぐらいと考えて いましたが、予想を遙かに上回る308名の方が参加して下さいました。参加者 の内訳は、会員176名、非会員132名でした。

 発表件数は口頭発表12件、ポスター発表40件でした。ポスター発表では他に 3件の申し込みがありましたが、発表時刻に間に合わなかったため、やむを得 ず発表取消とさせて頂きました。口頭発表の時間は、従来の大会では発表12分、 討論3分ですが、これでは十分ではないという準備委員の意見で、発表20分、 討論10分としました。ポスター発表は、これが大会発表のメインになるという 考えから、第2日の午前中に、他のプログラムと並行せず3時間の枠を取りまし た。

 学会設立20周年の記念事業として、山口薫先生「応用行動分析:わが国にお ける発展と課題」、佐藤方哉先生「日本行動分析学会20年のまとめと今後の展 望」の記念講演に加え、中国、韓国、台湾の行動分析家を招待した記念シンポ ジウム「アジアにおける行動分析学の現状と課題」が行われました。記念事業 がありますから、主催校のスタッフだけでは力不足なので、大会の準備委員に は常任理事の方々もお願いしました。2001年4月から候補者探しが始まり、日 本側報告者として小林重雄先生にお願いすることがまず決定しました。海外の 報告者としては、小野浩一先生のルートで韓国行動分析学会副会長の Hong 先 生が最初に決まり、次に河合伊六先生のご紹介で台湾の Lan 先生が決まりま した。他に木村裕先生のご紹介で中国心理学会に適任者の推薦をお願いして、 いったんは決まりかけたのですが、間際になって候補者が大会参加を断ってき ました。困っていたところへ、杉山尚子先生のご紹介で中国ABA 代表者の Peng 先生にお願いすることができたのです。浅野俊夫先生がコーディネータ になって下さって、記念シンポジウムを無事終えることができました。記念講 演と記念シンポジウムの内容は「行動分析学研究」に掲載されます。

 特別講演は上田邦義先生の「シェイクスピアと能と行動分析」、Richard Spates 先生の「PTSD(心的外傷後ストレス傷害):行動分析学による理解と 治療」をお願いしました。上田先生にお願いしたのは、行動分析学は幅を広げ る必要があるので、行動分析学にとっては異文化である精神世界のお話を伺っ たらどうかという真邉一近大会事務局長のアイディアからでした。ご講演を拝 聴して、上田先生が Skinner の著書をお読みになっていたばかりではなく、 そのご理解が深いことに驚嘆しました。行動分析学の思想は、心理学に限らず 広い範囲にまで広まる可能性があると思います。上田先生の能のパフォーマン スには、non-verbal communication の意味合いの深さを感じさせられました。 小野浩一先生が吹かれた能笛の見事さは、聴衆の記憶に残るでしょう。Spates 先生は島宗理先生が紹介して下さったのですが、ご講演ではPTSD という社会 現象に対して行動分析学が有効な対処の仕方を提供することを示して下さいま した。Spates 先生の講演内容も「行動分析学研究」に掲載されます。

 シンポジウムは、研究委員会企画シンポジウム「行動分析学の点検その2 『刺激性制御研究の未来を探る』」、会員自主シンポジウム「地域通貨と行動 分析」、「行動倫理学に向けて」が、それぞれ第1日に行われました。第3日の 公開ワークショップでは、「応用」92名、「基礎」8名、「アニマルトレーニ ング」210名の参加者がありました。

 主催校は獣医学科、動物資源科学科、海洋資源科学科などがある生物系の学 部です。主催校の特色を出すように企画した「江ノ島水族館見学ツアー」には 57名、「牧場見学」には15名の方が参加して下さいました。

 第1日の研究委員会企画シンポジウムと記念講演、第2日の記念シンポジウム と上田先生の特別講演では、インターネットのライブ配信が行われました。こ れほどの規模でライブ配信を行ったのは、学会として初めてのことです。

 準備段階では、大会論文集の印刷費を削減するために、論文集は印刷せず CD-ROMにして配布するという案が検討されましたが、時期尚早ということで従 来通りの論文集を印刷しました。その代わり、従来は大会プログラムを会員全 員に、論文集は大会参加申込み者だけに送付していたところを、今回はプログ ラム単独の印刷はやめて、プログラム付き論文集を会員全員に送付することに して、印刷費と郵送費を節約しました。大会ホームページには、論文集をお送 りする前から情報をお伝えするために、論文集の原稿をPDFファイルで掲載し ました。著作権の問題があるかもしれませんが、HPに掲載されたご自分の原稿 をお読みになった発表者がさらに修正を加えられて、論文集の完成度が高まる というメリットもありました。

 みなさまのご協力に御礼申し上げます。


シリーズ 現場を行く
第9回 高齢者支援の現場から

「病院臨床から考える高齢者」

稲葉純子(加治木温泉病院)

 当院は、脳血管性障害を中心にリハビリテーションを行っている病院です。

 少し前、100歳になる女性の方の担当になったことがありました。主治医か らの依頼は知能検査、人格検査です。疾患名は転倒による骨折、入所していた 施設内での受傷でした。毎月病棟内で行われるカンファレンス(症例検討)で は、担当である理学療法士ともども『いまさら筋力増強訓練?歩行訓練?』と いう雰囲気にならざるを得ません。なぜならお年が100歳なのです。老人カー で病棟トイレに出かけられるし、更衣、整容など身の回りのことは一通りこな せています。知的機能面では年齢相当とおもわれる程度の知能低下で、特に問 題は認められませんでした。30歳の私を前に「18歳ぐらいかと思ったよ、孫の 嫁にでもと思ったのに・・・・」と、(お孫さんはいったいいくつ何でしょ う?)このような判断能力に低下がみられましたが問題となる低下とは思えま せんでした。しかしこの方の施設入所となったきっかけは、「食事に毒を入れ られている」と被害妄想の出現だったそうです。当院での入院中にはこのよう な妄想は聞かれず、現実的で、人格は保たれている様子がうかがえました。対 人的には、お話好きで、よく私と楽しそうにお話をしてくれる方です。自宅に いらっしゃる頃は、ご本人と息子夫婦、孫夫婦との3世代同居をされており、 その生活の中で様々な思いを感じてきたそうです。昔の方は本当に苦労されて 生きてこられており、この方も例外ではないのでしょう、ご自分の苦労話を何 度も何度も私に聞かせてくださいました。そして必ず最後にはこう言います、 「今の人たちには解らないだろうね」と家族との同居でいろいろ感じているよ うでした。何でも、ご自宅にある神棚に、今まで無事に生活できたこと、これ からの生活の安全を願いに、毎朝一番、挨拶に行くことが日課だったとのこと です。しかし、その神棚の前に立つまでに、必ず息子嫁、孫嫁の前を横切って いかなければならなかったそうです。神棚に朝一番に挨拶に行く事が今までの 習慣、神様にまず一番に挨拶を今までずっとしてきた、それを守るためには嫁 たちの前を無言で横切らないといけない、自分が挨拶しないで通り過ぎること を嫁たちはどう思っているのだろうか・・・・と、毎日のように思い悩んでい たようです。その為、この心の負担が歪みを起こし、次第に嫁たちが自分の事 を悪く思っているのではないか、邪魔に感じているのではないかという、被害 的な妄想に移行してしまったと考えました。『無言で通り過ぎる』という行動 に対して、ご本人は弁解しなかったそうです。家を離れ、施設への入所や病院 へ入院することで、神棚を参るという習慣に囚われなくなり、お嫁さんたちに 気を遣うこと事もなく、本人にとっては開放された日々であったのかもしれま せん。なぜなら、入院生活に対して受容的で、穏やかな印象がうかがえたから です。その後この方は2ヶ月ほどして、申し込んでいた施設の順番が来て退院 されました。やはり本人、ご家族とも自宅退院は望まれていませんでした。

 このような妄想を抱くのは高齢者の方では珍しい事ではありません。記憶能 力の低下、判断能力の低下など加齢と共に知的機能面が低下していくものです。 そして、子離れ、定年退職、環境変化、配偶者の死など多くの喪失感を経験し、 精神心理面に影響を与え、このような心の不安定さが何かの拍子に何らかの行 動へと現れることが高齢者には多いと言えます。

 次は高齢者特有と言うよりも入院前の生活に関連した、女性であるが故(?) の問題行動を呈した方の話です。脳梗塞を発症し、回復期リハビリテーション 病棟に入院してきた77歳の女性の方です。この方の日常動作は自立で、病棟内 を自由に歩き回れる方でした。しかし、重度の失語症を呈しており発語は不可、 言語理解力も重度に障害、ジェスチャーでの状況把握も困難などコミュニケー ションはかなり難しい方です。また物品の認知力の低下、自分が病気だと認識 する事さえもかなり難しい状態の方でもありました。本人は入院当初からかな り不安げで、娘さんは心配し足繁く病院に通ってきていました。ある日、ベッ ド周りの荷物を風呂敷にまとめて帰ろうとする行動(離院)が出現し、それが 徐々に頻繁になってきました。失語症の為、他の病棟、院外に行ってしまうと 大変なことになります。病棟側は名前、病棟名を記入した名札を作成しました。 確かに、入浴・排泄動作、更衣、整容、歩行などの動作が出来て、失語症の病 識は希薄、本人の中で困っていることは何もありません。『どうしてここにい るのか?家に帰らなきゃ』という思いを抱くのは当然です。しかし、それだけ が理由ではないのかもしれません。なぜなら病前この方は、痴呆症の夫の面倒 をご自宅で、おひとりで見ていらっしゃったそうです。もしかすると夫のこと が心配で、いても立ってもいられない気持ちが本人の中にはあったもかもしれ ません。今となっては確かめることは出来ませんが、結局この方も、心配され た娘さんと主治医が話し合い、痴呆症の方のための施設(施錠管理されている) へ入所されました。失語症も大きな意味では痴呆症と言われますが、私の中で はとても複雑な結末を迎えた症例となってしまいました。

 以上のように、人はその行動を起こすのには何かしら理由があるといえます。 それが無意識的であっても潜在的な理由があるのでしょう。高齢者の方の問題 となる行動の背景にも、何か理由があるのではないでしょうか。ただの問題行 動、異常行動として受け止めるのではなく、『なぜそう思うのか、行動するの か?』という疑問を持つことが大切です。相手の行動をよく観察し、行動の裏 に隠れている心の動きをわかってあげられることが、高齢者に対するケアの面 で重要な事だと考えます。


高齢者とQOL

植松芳信(武蔵野中央病院)

 私は高齢者の臨床に携わるようになってからまだ4年目と日が浅いのですが、 この領域においても行動分析学は高齢者やその介護者のQOLの向上に大き な役割が果たせるのではないかと考えています。私は大学院修士課程在学中 からある特別養護老人ホームでケースカンファレンスに出席し実際にケース を担当する機会があったのですが、その際、多くの職員は「利用者により良 い生活を」との意志を持っている反面、どのように働きかけたら良いのかが 分からないということが多くありました。例えば、職員の声かけに対してほ とんど反応を示さないため職員が強い調子で言ったり、身体的ガイダンスを すると一転、強く拒否するという重度の痴呆を持つ方がいました。このよう な場合、一般に「活動性が低い」「抑うつ的だ」「非協調的だ」との判断を しがちです。その結果、介護者は「何とかしたい」と考えていても、具体的 な方策を立てることができなくなるようです。そのケースでは、食事ならお 箸、お風呂ならタオルのように直後の活動内容を示す物を見せたところ「反 応しない」ということはほとんどなくなりました。このことよりこの高齢者 が反応しないのは「抑うつ」や「非協調的」なためではなく、職員が行って いた「声かけ」が対象者に伝わっていなかったためと考えられました。この ような方法は行動分析を知らない人でも思いつく方法ではあると思いますが、 対象となる人の行動にラベルを貼ることのない行動分析学によって、より具 体的な方策が明らかになるといえると考えられます。

 もう一つ例があります。このケースの高齢者は重度の痴呆を持っていると共 に歩行不能な方で、問題となっていたのは、身の回りにある布を破くというこ とでした。初めてその方のベッドサイドへうかがったときは、間仕切りのカー テンの裾がほつれ、部分的にすだれのようになっており、首にはご本人の破い た布がスカーフのように巻き付けられていました。このケースにおいても、職 員はこの行動について解決の糸口をつかめず、できることならこの行動をなく したいと考えていたようです。布製品は身の回りにあふれており、それを撤去 することは不可能に近く、また、介護コストもかかっていることから、職員の 側からの要請も強いケースでした。職員への聞き取りや対象の方の観察から、 その行動はおそらく感覚的強化により維持されている行動であると推測されま した。そこで、一日一時間程度、飽きるまで不要になったシーツ(シーツを約 1m四方に切り揃え、約2cm間隔で1cmの切り込みが入っている)を破るという感 覚的強化の飽和化を行ったところ、日常使用する布製品を破ることは激減しま した。しかし、この方法では職員が一人、毎日一時間はその高齢者につきっき りになってしまい、継続的にこれを行うことは困難であることから、飽和化に 用いたのと同様のシーツを一日一枚ずつその高齢者に渡すという手続きを試み ました。すると、対象の高齢者は選択的に職員から提示された布を破くように なり、その他の日常使用する布製品を破ることは減少しました。この介入では あえて問題とされていた行動を抑制せずに行動の弁別刺激のみを変更する手続 きをとりました。日常生活に使用される布製品を破くことが問題であり、不要 となったシーツを破くことはそれほど問題とはならなかったからです。また、 対象となった高齢者がベッド上で行うことのできる行動は限られており、職員 の方も「それくらいなら」と暖かい目で見守れるようになったようです。問題 となる行動があると一般にその行動を抑制(自発されないように)させる手続 きをとりがちですが、細かく行動を分析することで真に問題となる点が浮き上 がり、最小限の介入で済むという利点があるといえるでしょう。私はこの最小 の介入という点が高齢者を対象としたとき重要な指針になると考えています。 それは、高齢者、特に痴呆等の障害を持つ高齢者にとって、問題とされる行動 さえも残存能力を維持させるための重要な手がかりになっている場合があると 考えられるからです。このような場合、行動の原因を明示できる行動分析によ り、高齢者の残存能力の低下を招くことなく、しかも周囲の介護者にとっても 許容できる行動を形成することができるのではないでしょうか。

 以上二つの事例を通して、私の考える高齢者臨床における行動分析学が果た せる役割について述べました。ここに書いたのは非常に小さな点かもしれませ んが、私はこれらのことを積み上げることが高齢者・介護者のQOLに結びつ く事になると考えます。また、ここで述べてきたことはすでに様々な領域で行 われていることであり、高齢者に特別なものではないと思います。しかし、高 齢者臨床における応用行動分析学は、未だそれほど大きな広がりを見せていな いようです。ぜひ、皆様のご意見を聞かせていただければと存じます。


ハンセン病は治る病気 

加賀谷紀子(国立療養所栗生楽泉園)

 この4月に国立療養所栗生楽泉園(くりうらくせんえん−以下当園とする) に赴任して早や、7ヶ月余り経ちました。長い間の看護学校の教員生活から久々 の臨床で、戸惑う毎日ですが周りのスタッフに支えられ看護管理を行っていま す。

 私の勤務する療養所はハンセン病療養所です。ハンセン病やその患者につい てここ数年、マスコミで大々的に報道され、一般の方々にも多く知って頂ける ようになりました。また、ハンセン病を初めて知った方、日本にもまだたくさ んの患者がいることを初めて知った方も多くあったのではないかと推察します。 そこで私の職場を紹介するとともに、皆様にハンセン病のこと、入居者のおか れた状況と歴史的背景について深く理解していただくことを願ってここに述べ させて頂きます。

 ハンセン病療養所は全国に15施設あります。そのうち国立の施設は13施設で あり、全国で入居者は約4,800名余りです。当園は群馬県草津町に位置してい る療養施設で、草津温泉がハンセン病に効くということで戦国時代からハンセ ン病患者が集まっていました。多いときは800余名の大集落をなした時期もあ りました。その間キリスト教宗教団体や慈善事業団体等により施設、病院が開 かれましたが、国が昭和7年温泉街から3km離れた地に患者移転後、幾多の変 遷を経て現在の施設を設置しました。今年で創立70周年を迎えました。

 敷地総面積は733,253u、標高1,100mの地にあり、園正門から入るとまもな く、管理棟、病棟等の建物があります。山の斜面を麓に沿って入居者の住居が 建ち並んでいます。園内、外ともに温泉の湧き出た浴場がところどころにあり、 入居者の皆さんは殆ど毎日利用しております。

 病床数は731床ですが、亡くなった方、数少ないが社会復帰をした方、家族 のもとで一緒に生活をしている方もおり、その数も年々少なくなってきている 状況です。現在は260人が園で生活をしていますが、高齢化しており平均年齢 が77.5歳になっております。園は、診療部、看護部、事務部、福祉部に分かれ、 職員定員数は356名で治療・看護・介護・福祉面で対応しています。

 ハンセン病とは1873年ノルウエーの医師ハンセン氏が発見した「らい菌」に よって主に皮膚や末梢神経が侵される慢性感染症のひとつです。この菌の毒力 はごく弱く、感染しても発病することは極めてまれであり、化学療法(現在は いくつかの薬剤を組み合わせた多剤併用療法―MDTという)の発達によって治 癒するようになりましたが、化学療法がなかったころは不治の病、恐ろしい伝 染病として忌み嫌われていました。1931年、「らい予防法」が制定されすべて の患者をハンセン療養所に隔離する対策がとられました。そこで社会からの隔 離を余儀なくされ、療養所の中ですべての生活をすることを強いられたわけで す。住居の周りには今は趣味で栽培する草花や畑がありますが、かつては外に 出ることのできない状況下で畑を耕し、野菜栽培、養豚などで自給自足に近い 生活をしていたということです。今では設備も整えられ、美・理容院、雑貨店、 郵便局、教会、寺院、冠婚葬祭ができる集会場等が設けられまた、業者の出入 りも多くなり、衣類なども自由に購入することができるようになりました。

 化学療法がまだなかった時代(昭和20年以前)は患者さん同士の結婚は認め られても、子供を生み育てることは禁じられていました。夫婦にとっては耐え 難い苦痛だったと思われます。また当時は、治療に当たる医師や看護者も少な く、軽い症状の患者さん達が重症の患者さんの治療に関わっていたこともあり ました。

 1953年、「新らい予防法」が制定されましたが残念なことに強制隔離政策は 継続されました。治療薬が使用され治癒できる病気とされながらも長い間、 「らい予防法」はまかり通り、1996年、ようやく廃止に至りました。しかし 「らい予防法」が廃止され、ハンセン病が治癒しても後遺症で、手・足の変形、 目の障害、神経痛で悩まされるなど、二重三重の障害を持ちながら療養生活を している方が多くおります。また、既にハンセン病は治癒して一般の高齢者と 同じく、高血圧症、糖尿病、心疾患、がんなどで闘病生活をしている方も少な くありません。

 2001年、熊本地裁判決で人権侵害謝罪、国家賠償請求訴訟で原告側(回復者) の完全勝訴となり、マスコミを賑わしたことは記憶に新しいことです。ハンセ ン病患者さんも今は、一般病院で入院治療ができるようになり、また、町に買 い物に出かけたり、レクリエーションなどの社会交流も自由に参加できるよう になりました。このことからハンセン病は不治の病ではない、容易に感染する 病気ではない、治療薬で「ハンセン病は治る病気」と言えるのです。そして、 早期発見・治療することで後遺症もなく治癒できます。

 近くの婦人団体や、小・中学生、看護学生、医学生達がたくさん慰問や見学 実習に見えます。とても有り難いことと感謝しております。しかしまだまだ古 くからの偏見や差別が残っており、また、後遺症による身体障害、変形、高齢 化、長期間の社会隔離等のために社会復帰は難しいとされています。 

 私たち職員の使命は、医療・福祉の充実を図りながら、長い間の偏見と差別 に堪え、生きてこられた患者さんの状況を理解し、人権回復のための啓蒙啓発 活動、社会復帰の支援に努めることだと考えております。


私の好きなこの論文−その10−

大石幸二(明星大学)

 小美野喬先生(明星大学)からバトンを引き継ぎました。研究室の廊下ですれ 違いざまにバトンを差し出されましたので、思わず受け取ってしまったという 感じです。小美野先生から「よろしくお願いします。」とキッパリ言われると、 できるかどうかという見込みもないのに、きまって「はい、分かりました。」 と応えてしまいます。(小美野先生に対してばかりでなく、多くの先輩方に対 してそうなのですが……。)それにしても、明星大学というところは『行動分 析学』研究をなさっている先生方が多いので、ひとつ間違えると、学内でグル グル執筆者がリレーされてしまいそうです。(気をつけなければ……。)

 それにしても、“好きな”論文と言われてすっかり困ってしまいました。 “好きな”モノを選べる機会が強化刺激(事態)として機能するということを院 生の時代に眺めてきたはずなのに、いざ自分のことになるとほんとうにうまく いきません。しかし、考えた挙げ句に、次の論文を紹介することに決めました。 現下の私自身の課題とも関連が深いからです。

 この研究では、12歳の行動上の問題を示す児童を対象として、強化随伴性を 誰が管理するか(教師か、児童か)を独立変数として操作し、対象児のアカデミッ クな反応に及ぼす効果を1分あたりの反応数を測度として検討しています。

 現在のわが国の通常教育においてもそうですが、知的発達に大きな問題が認 められないのに、逃避や回避機能を有する行動を自発し、結果としてアカデミッ クな課題や活動には参加できていない児童生徒が問題視されています。しかし、 これらの児童生徒に積極的に行動の自己管理スキルを行動として成立させよう とする取り組みは、ほとんどみられないというのが実情です。(それ以前の問 題として、このような研究知見を知らない訳ですが。)

 Lovitt & Curtiss(1969)は、このことに関連して、@児童生徒が自分のアカ デミックな能力(たとえば、どれくらいスキルに習熟しているか、どれくらい のペースで遂行できるか)をよく知り、Aアカデミックな課題や活動にどのよ うな順番で取り組むかを自分で決めさせ、B課題や活動を達成した際の強化随 伴性(達成基準を含む)をどうするかも自分で決めさせ、Cあらかじめ自己決定 した計画を遵守できた場合に、強化刺激(事態)を獲得できるようにすることを 提案しています。そして、現場教師は児童生徒が自分自身の学習環境をアレン ジする行動を自発できるように配慮すべきであるとも述べています。

 彼らの研究は、ワシントン大学内に附設された実験教育学級を舞台にし、わ ずか1名の対象児しか取り上げていないので、一般化については場面設定と対 象者の幅を検討する必要があります。しかし、少なくとも対象とされた12歳の 児童については、活動や課題の達成状況を記録し、あらかじめ設定されたポイ ントを自分で計算して、そのポイントに対応する強化刺激を手に入れる手続き (児童自己付与随伴性)の方が、この一連の手続きを教師が行う場合(教師付与 随伴性)よりも、高比率のアカデミックな反応が得られています[実験T]。 また、実験Tの手続きのうち、達成状況に対応するポイント数を児童自身に決 定させるように変更すると、「教師付与随伴性」と「児童自己付与随伴性」と の反応率に関する乖離はより顕著になっています[実験U]。

 彼らは、討論のなかで、本研究の手続きがカリキュラムに関する一種の選択 機会の提供に該当し、仮に2つのアカデミックな課題や活動から一方を選べる ようにアレンジするだけでも決定的な独立変数となる可能性があることを示唆 しています。そしてこの考え方は、Dyer, Dunlap, & Winterling(1990)の研究 にも引き継がれており、アカデミックな課題や活動と強化刺激(事態)の選択機 会を提供することで、深刻な行動上の問題の減弱に成功しています。なお、私 の現下の課題は、これらの実証的な根拠にもとづく手続きを、いかにわが国の 学校教育サービスに導入し、定着をはかるかということです。

 さて、次回は、杉山尚子先生(山脇学園短期大学)にバトンをお渡ししたいと 思います。このリレーについては、紹介論文の選定以上に頭を悩ませてしまい ました。小美野喬先生からは、“基礎から応用へ、そしてまた基礎へ”という 相互作用を意識し、この特集記事が組まれているのではないか、とのご教示を いただいておりました。杉山尚子先生とは、10年近く前の埼玉県民活動センター で開催された本学会の公開講座(泊まりがけでした)の折に初めてお話させてい ただいて以来、暖かい言葉をかけていただいております。私は、専ら国際的な 舞台で行動分析学の知識・技術の普及と養成や研修などにあたっておられる姿 しか存じて居りません。次回の寄稿に、ご期待申し上げたいと思います。

引用文献

Eunice Kennedy Shriver Center訪問記

鶴巻正子(福島大学教育学部)

 2002年9月18日から21日まで,アラバマ州オーバーン大学で開催された「第 6回行動主義と行動科学の国際会議」に佐藤方哉先生,杉山尚子先生とともに 参加しました。そのあと,Robert Stromer先生にお目にかかるため,Eunice Kennedy Shriver Centerを訪問しました。

 Stromer先生は,発達障害児者を対象に,コンピューターを使用して matching-to-sample procedureを実施し,spellingやhand-writing の獲得を 目指しておられます。私は,片岡義信先生(福島大学名誉教授)のもとで matching-to-sample procedureを学び,精神遅滞児を対象とした読字行動の獲 得にこの方法が応用できないか検討してきました。1999年8月には研究室 の在学生・卒業生の希望で,Stromer先生をはじめとする研究者の論文を講読 するために合宿を実施しました。また,注意欠陥/多動性障害児における読字・ 書字行動の獲得にmatching-to-sample procedureを活用できないかと考え,日 常の生活に忙殺されながらも細々と検討を始めました。今回の訪問は,この研 究課題を推進するために科学研究費補助金を獲得し,諸々の校務をやりくりし て実現した機会でしたので,渡米前から楽しみにしておりました。

 ふだんは単独での移動が多いのですが,初めて訪れるボストンでの一人旅は 不安が多く,また,9月という時期も考慮して,アメリカ在住の新進気鋭の研 究者である鷲尾幸子さんと渡辺貴英さんのおふたりに助けていただくことにし ました。鷲尾さんは,Western Michigan University大学院でRichard W. Malott先生に師事し,研究生活にがんばっておられます。今年の日本行動 分析学会第20回大会(日本大学)や第6回行動主義と行動科学の国際会議(オー バーン大学)でも意欲的にポスター発表をされていました。渡辺さんは Western Michigan Universityを卒業後Boston Universityの修士課程に進まれ, School of MedicineでMental Health Counselingの研究をされています。

 9月23日,前夜はひどい雷雨でしたが,朝は小雨程度に天候が回復しました。 鷲尾さんと渡辺さん,そして私の3名は,道路の端にできた水たまりに気をつ けながら,宿泊していたホテル前からタクシーに乗り込みました。Eunice Kennedy Shriver Centerは,ボストンの市街地から約15マイルほど西に位置し たWalthamにあります。往路はハイウエーから山道を通るルートで35分ぐらい かかりましたが,復路のタクシードライバーは陽気な地元の方で,Walthamの 市街地を抜けて25分でホテルに戻りました。

 Eunice Kennedy Shriver Centerの周辺はなだらかな丘陵地で,広い敷地内 に点在する建物と,駐車場に整然と並んだ自家用車の列,そして,敷地と道路 一本隔てた草原をゆったりと歩行する野鳥の群れが一体化して静かな空間を作っ ていました。

 Eunice Kennedy Shriver Centerの運営はUniversity of Massachusetts Medical School に移ったそうで,渡米前に見ていたホームページと同じマー クが,入り口の案内板や建物内に表示されていました。

 約束の時刻よりも早く到着しましたので,センターのメインエントランスで 掲示物などを眺めておりましたら,Stromer先生をはじめ,William J. McIlvane先生,William V. Dube先生,Richard W. Serna先生など,論文で 存じ上げている先生方のお名前がずらりと並んでいるパネルがあることに気づ きました。写真を撮り忘れたことがたいへん心残りです。

 Stromer先生に案内していただいた会議室には,すでにパワーポイントと大 きなスクリーンが用意され,傍らでは奥様がにこやかに私達を待っていてくだ さいました。Stromer先生が「私のエディターです」と紹介されると,奥様は 頭を左右に軽く振りながら微笑んでおいででした。

 Stromer先生は,コンピューターを有効活用することにより,対象児の spellingやhand writingにかかるコストが抑えられること,個人によって異な るスケジュールをactivity scheduleにできること,保護者や教師を巻き込み spellingやhand writingを家庭や学校での日常生活に積極的に取り入れ,何回 も繰り返し練習できる工夫ができることなど,実験結果をふまえた先生の考え 方を具体的に説明してくださいました。幼稚園の先生が,広汎性発達障害児を 対象に,研究成果を取り入れた早期療育プログラムを実施している様子も見せ ていただきました。また,2000年8月,山本淳一先生(慶応大学教授)の招聘 により,Stromer先生が国際シンポジュウムと筑波大学カンファレンス・公開 講座にご出席のため来日された折のことを,楽しそうに思い出されながらご紹 介くださいました。さらに,説明の合間やお茶の時間には,私達の質問に対し, 論文の内容や地域の実情などもふまえて丁寧にお答えくださいました。興味深 い話を伺っているうちにあっという間に時間が過ぎてしまい,名残惜しかった のですが,センター前で記念写真を撮ってお別れをしました。短時間の訪問で したが,大変有意義な時間を過ごすことができました。

 最後になりましたが,試験や講義の準備があるにもかかわらず,ボストン市 内での食事や移動,交渉など多方面にわたり心強いサポートをしてくださった 鷲尾さんと渡辺さんに,この紙面をお借りしまして心より感謝申し上げます。


こんな本を書いた! 訳した! 読んだ!

『自閉症児の臨床と教育』

田研出版 氏森英亞編著 2002年5月 2500円(税別)
小笠原 恵(東京学芸大学)

 「21世紀の特殊教育の在り方」についての最終報告が提言され,つい先日中 間まとめが出された。その中で,自閉症の児童生徒の教育的対応については、 知的障害との違いを考慮しつつ障害の特性に応じた対応についての研究の必要 性があげられている。また,養護学校における自閉症の児童生徒は増加傾向に あり,独自のニーズに応じた発達支援法の開発や自閉症にかかわる教師や臨床 家の更なる専門性の向上が重要な課題の一つとして考えられるようになってき た。

 本書は「自閉症の子どもたちは,他者への関心が薄く,また他者と相互交渉 を行うというスキルも乏しいという問題が存在している。これらの問題を少し でも解決できる支援の方法を開発していくことが,自閉症の子どもにおける全 般的な発達を支援する上での要となる。」という編著者の考えをもとに,自閉 症における社会的行動の発達支援方法について,理論と臨床事例の紹介,さら に応用行動分析学が自閉症の臨床と教育にどのように貢献できるかという点か らの解説が紹介されている。

 理論編である第1章では,自閉症のコミュニケーション行動,自己刺激行動 や自傷,他傷行動,さらに,社会的行動についての解説がなされている。第2 章では、自閉症における代表的な行動にかかわる事例研究が6例紹介されてい る。話しことばがない自閉症児に対する補助代替コミュニケーション(AAC) を用いた指導法,不適切行動の軽減をはかるための機能的コミュニケーション 訓練に基づいた指導法,行動連鎖中断法や集団随伴性を用いた社会的行動の発 達支援法、と紹介されている支援法は多岐にわたる。さらに,6年間という長 期にわたる言語を中心とした指導例についても紹介されている。第3章は自閉 症と応用行動分析学へのコメントが紹介されている。学校場面で応用行動分析 学がどのように貢献できるか,さらにアメリカにおける今日の応用行動分析学 の現状を紹介し,さまざまな生活環境の中での生活の質(QOL)の向上につな がるビヘイビオラル−サポートが普及する意義について概説されている。

 以上のように,本書は自閉症の子どもたちの臨床や指導を志す人々に対する 入門書として、実践的な内容がふんだんに取り入れられている。ぜひ,ご一読 を。


『入門 発達障害と人権』

スティーブ・ベーカー&エイミー・テーバー(著)渡部匡隆・園山繁樹(訳)二瓶社 2002年9月 1000円(税別)
渡部匡隆(横浜国立大学)

 原題は「人権委員会:組織を正しく方向づける」と訳せますが、日本語訳と して「発達障害と人権」としました。障害のある人の権利擁護を主題としてお り、手元において簡便に使用できるような小冊子となっています。内容は、障 害のある人にかかわる組織、機関、それに関係者が、人権委員会を設置したり 強化するための課題・疑問・留意点の解説と基本的なステップを示しています。

 発達障害のある人々の地域生活が強調され、それにともなってさまざまな支 援サービスも大きく変化してきています。例えば、福祉サービスは、来年4月 から支援費制度が発足されることになっています。これは、いままでの福祉サー ビスが行政が個々の障害のある人々に対して必要と思われるサービス内容を決 定し、どこまでサービスを受けるかについても行政が決定してきましたが、平 成15年度からは、障害のある個人が自ら市町村に希望するサービスの利用につ いて支援費の支給を申請し、受給者証の交付を受け、都道府県が指定した事業 者や施設の中から障害者自身がサービスを選択し、契約を結ぶことになってい ます。利用者は、事業者や施設に対して直接利用料を支払い、市町村は事業者 や施設に支援費を支払うことになっています。

 こうした動きは、「措置から選択へ」「対等な関係の成立」という考え方に そった動きといえると考えます。ところが、さまざまな事例に出会うたび、現 在、地域社会で生活している多くの障害のある人々にとって、そして、それを 支援する人々にとっても大変危なっかしい状況のなかで地域生活への営みが進 められているといってもよいのではないかと思います。それは、一般の人々が 生活するリアルな環境のなかで、障害のある人々とその支援を進めている人を どのように守るかという観点からの取り組みが案外脆弱なものであるという点 です。そのことは、地域といった大きな枠組みのなかでの問題と、直接、障害 のある人々を支援する機関や組織が日常的に出会う問題という両方の側面にお いて生じる課題であると思います。本書は、障害のある人々を直接支援する機 関や組織が、質の高い支援やサービスを提供したり開発したりするなかで生じ る課題やジレンマに対して、人権委員会という手だてをとおして、障害のある 人々、そしてそれを支援する人々の人権の保護・支援・およびその権利の行使 について、具体的に解説したものとなっています。

  執筆をされたお二人の先生は、自閉性障害のある人のグループホームで直 接支援スタッフとして、あるいは、管理の仕事をされながら、発達障害のある 人々に対する人権委員会の活動に長く携わってこられた経験を持っておられま す。ぜひ、お読み頂ければ幸いに存じます。


公開講座のお知らせ

『福祉・保育・教育における行動障害の援助』−自閉症・LD・ADHDの人た ちの健やかな生活のために−

『家庭や学校でできる自閉症児への応用行動分析学的アプローチ』

主催:日本行動分析学会/自閉症とその周辺の障害を持つ子と親の会I・I(あ い・あい)/屋島総合病院

 自閉症やその周辺の障害をもった子どもへの教育的支援については、応用行 動分析学からのアプローチの有効性が、数多くの研究から明らかにされてきて います。しかしながら、我が国においては、保護者や教師、医療・福祉関係の 実践家にまで広く知られているとはいえません。そこで、この公開講座では、 家庭や学校、地域で取り組める、応用行動分析学的アプローチの具体的な内容 と方法を、数多くの事例に基づいて解説します。また、診断と最近の薬物療法 に関する医学的な情報も提供します。

『ADHDのある子どもへの支援』

主催:福島ADHDの会『とーます!』/日本行動分析学会

 福島ADHDの会『とーます!』は、2001年4月、ADHDのある子ども達の保護者 やその関係者(教育・医療・保健・福祉等に携わる人々)が集まり、ADHDの問 題や行動を理解し、家庭や学校、医療、地域などで適切なサポートやサービス ができるよう考えていこうという主旨のもとに発足しました。

 ADHD(Attention Deficit / Hyperactive Disorder 注意欠陥/多動性障害) は、衝動性や多動性、不注意から、家庭や幼稚園、保育所、学校などで日常の 生活に混乱を引き起こすことがあります。ADHDのある子ども達におけるこれら の特別なニーズに応えるためには、子ども達の示す行動を適切にとらえ、課題 を整理することが必要です。今回の公開講座では、杉山尚子先生をお迎えして 「行動随伴性ダイヤグラム」についてご講演いただき、行動の見方・とらえ方 の基礎を学んでいきます。また、福島ADHDの会『とーます!』の会員による実 践報告を通し、教室場面や地域、医療場面におけるサポートのしかたについて 考えていきます。多くの皆様のご参加をお待ちしております。


学会情報:常任理事会ヘッドライン

◆会員数(2002年11月20日現在)、600名に
 内訳は一般472名、夫婦6名、学生122名です。

◆第20回年次大会盛会裡に終る
 第20回(2002年度)年次大会は、2002年8月22日(木)、23日(金)、24日 (土)の3日間、日本大学生物資源科学部で開催されました。今回は第20回記 念としてアジアシンポ、記念講演等さまざまな企画が盛り込まれ、308名の参 加者がありました。

◆2004、2005年度年次大会開催校決まる
 11月30日の常任理事会において、2004年度大会を帝京大学、2005年度大会を 常磐大学で開催することが内定しました。

◆学会賞の選考始まる
 いよいよ学会賞がスタートしました。まずは、会員による「実践賞」候補者 の推薦です。実践賞にふさわしい人や機関をぜひご推薦ください。

◆学生会員ABA参加助成事業もスタート
 学生会員の国際的研究活動を支援するための事業として今年度から実施され、 早速来年5月のサンフランシスコでのABAに2名の学生会員を派遣します。 すでに応募は締め切られ、まもなく助成を受ける2名が決定します。

◆次期役員決定
 本号の速報にもあるように、去る11月30日の理事長選挙をもって今回の役員 選出のすべての日程が終了しました。この後、1月25日と3月1日の常任理事会 で、今期の総括と次期理事会への申し送り事項を検討します。会員各位からも ご意見、ご要望等がありましたら、事務局までお寄せください。

(情報提供:小野浩一理事長)

J−ABAニューズ編集部
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